だっておれは兄さまを傷付けたんだ。これは兄さまを傷付けた罰なんだ。
ゆるゆるとベルトに手を掛けられた。ゆっくりと背中を撫で回されながら、ベルトの留め金が外される。
その内、ジーパンの留め金も外されるんだろうな。
「手馴れてるのかな」
顎を掬われる。
抵抗しないおれに笑みを浮かべるおじさん。そんなわけないけど、もういいや。どーなってもいい。
この後、キスされるんだと分かっていても抵抗しない。
罰だったら甘んじて受けるしかないんだって「那智に触ってんじゃねえぞ阿呆が!」
聞きなれた声。悲鳴と暴行する音、向こうに飛んでいく体。
全部が一緒に聞こえてきた。
呆然とおれはその光景を見つめる。
麻痺していた感情が息を吹き返したように痛み帯び始めた。
中年のおじさんは相手の形相に驚いたのと、喧嘩はごめんだって恐怖を抱いたのか、一目散に逃げ出した。
小太りなのにその時の素早さといったら尊敬したいほどだ。
「逃がした」舌打ちを鳴らすその人は、クシャクシャに顔を歪めて「阿呆が!」おれを怒鳴った。
「なんでっ、なんで抵抗しねぇんだ!」
振り上げられる手の動作は、きっと平手打ちなんだろうな…、なんて思ってたけど、その手はおれを抱き締めてきてくれた。
あ、汚れる。
兄さまが汚れる。
「駄目、おれ汚いです。触っちゃ駄目駄目駄目」
身を捩って逃げようとするけど、腕の力は強まる一方だ。
「だめ、だめです…っ、汚いからぁ、おれ、ギュってしてもらう資格っ、ないんですっ…にいっ…治樹さまぁ」
「馬鹿、兄さまだ」
「チガウチガウっ、おれはイラナイ子なんですっ…、兄の望みも叶えられなかったっ…愚かな奴なんですっ。死ぬこともできないっ、兄に何一つできないっ、裏切り者のッ、んーんーんー!」
荒々しく口を塞がれて、おれは嫌々って首を振った。
キスは駄目だ。
だっておれは汚いんだから…っ、汚いんだからっ…、でも兄さまは後頭部に手を回したまま固定。絶対に離してくれなかった。絶対に。
暴れていたおれだけど、無理だって気付いて抵抗を止めた。
代わりに申し訳なさでいっぱいの涙が溢れる。
こんなことなら臆病風に吹かれないで、さっさと死ねばよかった。
ゆるゆるとベルトに手を掛けられた。ゆっくりと背中を撫で回されながら、ベルトの留め金が外される。
その内、ジーパンの留め金も外されるんだろうな。
「手馴れてるのかな」
顎を掬われる。
抵抗しないおれに笑みを浮かべるおじさん。そんなわけないけど、もういいや。どーなってもいい。
この後、キスされるんだと分かっていても抵抗しない。
罰だったら甘んじて受けるしかないんだって「那智に触ってんじゃねえぞ阿呆が!」
聞きなれた声。悲鳴と暴行する音、向こうに飛んでいく体。
全部が一緒に聞こえてきた。
呆然とおれはその光景を見つめる。
麻痺していた感情が息を吹き返したように痛み帯び始めた。
中年のおじさんは相手の形相に驚いたのと、喧嘩はごめんだって恐怖を抱いたのか、一目散に逃げ出した。
小太りなのにその時の素早さといったら尊敬したいほどだ。
「逃がした」舌打ちを鳴らすその人は、クシャクシャに顔を歪めて「阿呆が!」おれを怒鳴った。
「なんでっ、なんで抵抗しねぇんだ!」
振り上げられる手の動作は、きっと平手打ちなんだろうな…、なんて思ってたけど、その手はおれを抱き締めてきてくれた。
あ、汚れる。
兄さまが汚れる。
「駄目、おれ汚いです。触っちゃ駄目駄目駄目」
身を捩って逃げようとするけど、腕の力は強まる一方だ。
「だめ、だめです…っ、汚いからぁ、おれ、ギュってしてもらう資格っ、ないんですっ…にいっ…治樹さまぁ」
「馬鹿、兄さまだ」
「チガウチガウっ、おれはイラナイ子なんですっ…、兄の望みも叶えられなかったっ…愚かな奴なんですっ。死ぬこともできないっ、兄に何一つできないっ、裏切り者のッ、んーんーんー!」
荒々しく口を塞がれて、おれは嫌々って首を振った。
キスは駄目だ。
だっておれは汚いんだから…っ、汚いんだからっ…、でも兄さまは後頭部に手を回したまま固定。絶対に離してくれなかった。絶対に。
暴れていたおれだけど、無理だって気付いて抵抗を止めた。
代わりに申し訳なさでいっぱいの涙が溢れる。
こんなことなら臆病風に吹かれないで、さっさと死ねばよかった。



