孤独は感情さえ蝕んでいくような気がした。
いつしかおれは痛みさえ、感じなくなっていた。
込み上げてくるのは愚かな自分に対する自嘲。
「汚いから…兄さまに嫌われちゃった。
ふふっ、兄さまにイラナイって言われちゃった。
弟じゃないって、もう…弟じゃないんだ、おれ」
現実を口にしてみると、余計に笑えてきた。
どの口で兄さまを好きなんて言ってたんだろうね、おれ。
絶対に裏切らない自信あったのに、まさか、こんな形で兄さまを裏切っちゃうなんて。傷付けちゃうなんて。弟じゃなくなっちゃうなんて。
おれ、兄さまを好きなんて言う資格も想う資格も、もうないんだね。
「せめて綺麗になる方法だけでも…、あ、そうだ」
おれは洗面台に立って、カゴに積み上げている固形石けんの一つ手に取った。
おもむろに封を切ってそのままガブリ。
不味い…、それでも我慢して食べたんだけど、結局トイレで戻した。
意味がない。
内側から綺麗になろうとしたけど。
じゃあ…、食器洗う洗剤は?
試してみたけど口に含んだ瞬間、おぇ…。効果なし。
どんどんエスカレートして、洗剤系は全部口に入れてみた。
全部駄目だった。
口内が荒れただけだった。
居間に転がる洗剤の数々を見下ろしながら、おれは小さく溜息をつく。
なんだか、おれが凄くすごく汚らしい存在に思えてきた。
おれが汚いから兄さまは帰って来ない。
あ、違う、帰って来れないんだ。
おれがいるから兄さまは安心して帰って来れないんだ。
だっておれ、もう兄さまの弟じゃない。他人になったわけだから…、でも否定もして欲しかった。
こんなおれにでもまだ、弟に戻れるチャンスはあるんだよって、兄さまに言って欲しかった。



