俺は煙草を吸い終わると鳥井にライスを渡して、ステーキ肉を頂きます。

「ありえねぇ!」

鳥井はせめておかずをくれって嘆いてきたから、ステーキについてた人参をのせた。

もはや向こうは引き攣り顔一色だった。


「……。若旦那は生粋の鬼だ。人じゃねえ」


項垂れる鳥井に、「後でケーキ買ってやれよ」なんて俺がトドメを刺すもんだから向こうはゲンナリ。

俺はというと、デザート待ちの那智の隣でまだ熱い肉を頬張っていた。




その夜のこと。

ファミレスで夕飯も済ませ(五時間以上ファミレスに滞在)、鳥井と一通り、依頼内容と今後の日程を決めてきた俺は那智と共に帰宅。

買ってくるや否や那智はホクホク顔で、鳥井から買ってもらった小さなチョコレートケーキのホールをテーブルに出して眺めていた。

後で一緒に食べようと綻ぶ那智に一笑を返して、俺等はそれぞれ時間を過ごす。

俺はノートパソコンでちょっと作業をしていたし、那智は問題集を解いていた。


時間が来ると俺から先に風呂、後から那智が風呂に入ったから、今は俺は部屋に一人で居る。
思案に耽ってキーボードを叩いていると、電話が鳴った。

無視しても良かったんだが気が乗って、俺は電話に出る。


相手は那智の担任、大道先生からだった。


俺が出るや否や、謝罪の嵐だった。

昼間に那智が井坂先生に激怒、そのまま保健室を飛び出してしまった経緯を頼みもせずにぺらぺら語る。


その勢いといったら…、弾丸並みだ。


とにもかくにも謝罪してくる大道先生は、後日井坂先生と共に詫びに行くと告げてくる。


やんわりと俺はお断りさせてもらった。


こっちも都合があるし、来ても那智が喜ぶ筈もない。


『そうですか』大道先生は声を沈ませる。

気にしないで欲しいと俺は心にもないことを言って、話を打ち切ろうとした。

あんま会話を長く続けたくなかったんだ。


『折角、那智くんが表情を見せてくれた矢先のことでしたので…、今日、那智くんが笑っていたのですよ』


心臓が鷲掴みにされた気分に陥った。
 
那智が、あの那智が笑っていた?
大抵あいつは俺以外の傍じゃ笑わない、というか、笑えない筈なのに?