「やっぱこっちの業界に合ってるかもな、若旦那。望むものは自分で手に入れるタイプだろ?」


「ああ―…、全部そうしてきた。
大人は誰もくれねぇから…、今の生活も手前で手に入れた。

これからもそうだ。
幸せっつーのは手前で手に入れてナンボの価値があるだろ?」


他人を不幸にしてもな。

テーブルに置いていた鳥井の煙草を拝借し、それを銜えて火を要求。
百円ライターを投げ渡してくる鳥井は、目を眇めながらも俺に微苦笑。


「やっぱこっちに来い。話せば話すほど、あんたにはこっちが似合ってる。
普通の幸せじゃ満たされないっぽいしな」


「普通とズレてるんだろうな、俺は。
いや…、親の教育の賜物で見事に歪んじまったみてぇ」


不味い煙草を一服。
別段、煙草を吸う方じゃないけど、不良と付き合いがあったせいで吸える男になっちまった。

ふーっと紫煙を吐き出して、俺はファミレスをグルリ。
和気藹々と会話する他人の群に不可解な気持ちを抱く。

他人と群れる理由が分からないな、ほんと…、なんであんなにも他人に気を置けるのか。笑えるのか。馴染めるのか。

すべてを分かり合えると溺れているのか。

それとも自惚れ。
自惚れに溺死。
他人に溺死。

嗚呼、理解不能。


「さてと、んじゃ、何から始めましょうか? 母親以外の犯人捜しでもしてみますか?
ま、アダルト会社員は探偵じゃないですが情報収集は得意ですよ」

「今から挙げる奴等をちょい調べて欲しいが、まずは残飯処理からだ。那智、デザート食いたいんだろ?」


半分ほどステーキ肉を平らげた那智は、うんっと大きく頷いてみせる。

デザートを食べたいがために腹五分くらいにしたんだろうな。

一緒に付いていたライスには手を付けてない様子。