「鳥井てめぇさ、那智を襲った二回目の時、那智の下着をナイフで裂いただろ? あれで那智、てめぇにホモ疑惑を持ったらしい。
『いい体してる』なんざ那智に言ったんだろ?
しかも抱きやすそうな体って言われた。
だから鳥井は男色の気があるんじゃないかって那智がそう言ってる。
で、俺に手を出さないでくれって頼んでる」
「ちょーっと待とうか、俺は確かにそんなことを言った覚えがある。
非は俺にある。
だけどその後、『興味ないけど』って付け足した記憶もある。
……俺はホモじゃねえぞ!」
バンッ―。
テーブルを荒々しくも大きく叩くもんだから、那智がひゅっと悲鳴にもならない悲鳴を上げて顔を歪める。
んでもって二回も襲われた恐ろしい記憶を思い出したのか、忙しなく肩を上下させて涙目になり始めた。
「ぅぅ…ぅうっ…、こわぃょぉ…」
「な、那智。泣くな。鳥井はもうてめぇを襲わないから。俺も襲われねぇから。な? な?」
慌てて俺は那智を落ち着かせる。
んでもってうん、と一つ頷き、俺は指の関節を鳴らして鳥井に視線を投げた。
「殺されてぇのかてめぇッ、那智を泣かせやがって」
やっぱ片目くらいは償いとしてもらっとこうか。
俺の唸りに、すぐさま態度を改めて鳥井は「襲うわけじゃないから」と、那智に弁解。
何を思ったか、後でケーキ買ってやるからなんて甘味でご機嫌を取る。
那智が「ちっちゃい真ん丸ケーキがいいです」なんて言ったものだから、鳥井はホールケーキを後で買う羽目に。
こうして鳥井は新たな出費を加算させることになったわけだが(「ありえねぇ」って鳥井は大きく肩を落としていた)、他愛もない話も程ほどにして俺は話題を切り替える。
話題は元雇い主の依頼内容
。
那智が運ばれてきたステーキ肉を一生懸命にナイフで切っているのを横目に、俺は改めて元雇い主の依頼内容を尋ねた。
「俺等の母親を襲うよう依頼したんだよな?」
「ああ。下川芙美子はお前等二人、合わせて二百万円用意するから命を取る。
もしくは命を取るまでしなくとも、兄弟を再起不能にするまで追い詰めるよう依頼された」



