【三章
麗しき現(うつつ)狂乱】
―――愛してるって誰のことを指す、勿論弟のことに決まってる。
好きだから束縛ことは当然だろうが、弟は俺のなんだから。
那智を不幸せにしてるのはおれ、だと?
ッハ、俺等の何を知ってるんだ? んなの他人の意見だろうが。
―――愛してるって誰のことを指すか? 勿論兄さまのことに決まってます。
おれ達は不幸せじゃなくて幸せなんですよ、本当ですよ。
治樹兄さまを不幸せにしてるのはおれ、ですか?
他人のお言葉は信じる価値もありません、信じたら兄さまに怒られちゃいます。
―――下川達はやっぱり間違ってる。
そんな生き方じゃ不幸せ一直線よ! あんた達、哀れよ。
―――下川ってさぁ、正しいことを正しいって思うのが恐いんだよ。
正常になるのを恐れてるって言うかさ…。
ほんとは正常になれる道だってあるのに、自分から背を向けてる。
―――こんな歪んだ兄弟(俺等)を生み出しちまった原因はだあれだ。