「にーさまのお友達さまが言いました。
ひとりに束縛されることは不幸せだと…。

違うのに…。
おれはにーさまの傍じゃないと…呼吸さえできないのに…」


距離を置かれる方が不幸せだ。
もっと束縛して欲しい。そして束縛されて欲しい。

他人は自分達を“不幸せ”だって言うだろうけど、自分は今、とても“幸せ”なのだ。


これからも、ふたりぼっちで生きていきたい。



「ずっとずっと…、いっしょ…、しんでも…、いっしょ…。
しぬなら…、にーさまに…ころされたいかも…です…」



ポツリ、ポツリ、壊れ気味の言の葉を漏らす那智は背中を丸くして眠りに就く。
始終腹を叩いていた俺だけど、不意に手を止めて頭に手を伸ばす。

そっと頭部に口付けて、小さくちいさく綻んだ。


「ああ、そうだな那智。

俺等はどーしょーもねぇ不幸せだ。
外界との交流を自ら遮断しちまってるんだから。

だけど俺等はどーしょーもねぇ幸せだ。
ふたりっきりで生きる、その喜びを知っちまったから」


絶対に裏切らない世界を作り上げちまったんだから。
んでもって俺等は外貌に反してすげぇメンタル面が脆いから、他人じゃ俺等が壊れた時、対処しきれないだろう。


深く互いを知ってる俺達じゃないと無理だろう。

壊れた俺等を寛大に受け入れてくれるのは、お互いをよく知る兄弟だけ。


俺が本気で壊れた日がきたとしても、那智は俺を受け入れてくれるだろう。

だから那智、てめぇが本気で壊れたとしても、俺はてめぇを受け入れるよ。


寧ろ那智、てめぇは壊れていいんだぞ。


兄さまの傍にいてくれりゃ、壊れたっていい。

兄さまを愛してくれりゃ、壊れたっていい。

兄さまを必要としてくれりゃ、壊れたっていいんだぞ。


そういう兄さまだって、とっくに壊れてるんだしな。