あ、そうか。
俺はひとりで納得し、あることに気付く。
このキモチに名前は付けられない。
だけど気付いた。
愛情が絶頂に達した時、人は居ても立ってもいられなくて行動に移すってことを。
態度で愛情表現を表すんだな。
それが抱擁だったり、接吻だったり、性交だったり。
表現することで楔(くさび)を刺すんだ。
お互いの愛情とやらを、確認するんだ。
「はるきに―…」
顎を掬い上げて、今、弟の肉付け薄い唇に唇を重ねることも、俺が那智に対しての愛情表現。
恋愛感情か、家族情愛かは知んねぇけど、表現することで那智の胸に楔を刺すんだ。
しっかり俺との約束を忘れさせないために。
幼い頃から弟に掛けていた魔法を維持するために。
抱擁だけじゃ足りなくなってきたから、取り敢えず、キスってので魔法の強化をする。
ずっとふたりぼっちでいよう、その魔法を掛けるために。
それだけ俺等の取り巻く世界がふたりぼっちの世界を壊そうとするんだ。
俺等はふたりぼっちを維持するために、より深く互いを好きになる必要がある。
気持ちと態度、両方をもっと全面的に出さないといけないんだ。
今までどおりじゃ、いつか、ふたりぼっちの世界は決壊する。
あ、嫌だ、そんなの嫌だ。
これまでの努力が霧散するようなことだけは…絶対に…、だからもっと深く、深く、ふかく。
落ちて、生きたい、これを人は堕落とも言う。