(旧)ふたりぼっち兄弟【BL寄り】

それより、早く病院に行かないと出血多量で死ぬぞ。

鳥井に言ってやれば、

「そこは病院に連れてってくれる系じゃねえの?」

ご都合的な事を言ってきやがった。

おいおい、こっちは被害者だぞ。
手前で行きやがれ。

素っ気無く返し、俺は仕方がなしに鳥井に携帯を出すよう言う。


ま、救急車くらいは呼んでやる。

ついでに赤外線で鳥井の連絡先を俺の携帯に入れる。


俺は鳥井に、自分の携帯番号だけ登録した。
自宅の電話番号なんざ命取りもいいところだろ。

さっさと救急車を呼んで携帯を投げ返す。

俺のアタタカイ気遣いに、「どーも」鳥井は投げやりで鼻血を拭いていた。まだ止まらないらしい。きったねぇ。
 
 
俺は鳥井に後日詳しく話を聞くから、

と、

裏切ったらどうなるか覚えとけ、

の二拍子を言い放ち、俺はドラム缶の上に座っている那智を連れて工場に出る。

工場の向こうには何故か福島の姿。
あ、那智の鞄…、こいつ、届けに来てくれたのか。そりゃ有り難い。


なんて思わない。


見たんだな、俺の行動を一部始終。
顔色があまり宜しくない。


血にまみれた俺の手に何処と無く怖じているみたいだ。

やっぱそうなるよな、俺の両手は今、鳥井という他人の血に塗られてる。誰もがこの手を汚らしいと思うだろう。
 
無言で那智に鞄を渡す福島。


「ありがと…ございます…」


通学鞄を受け取った那智は、素早く肩に鞄を掛ける。
それを確認した俺は那智に帰ろうと声を掛ける。そして佇む福島にはこう言った。


「見たことは忘れることだな。
じゃねえと、てめぇの命も危うくなるぜ。他者に公言しねぇことだ

てめぇは俺と違って正常者。俺は異常者。
俺は他人を思いやることも何もできねぇんだよ。そこのところが欠如しちまってるから。俺は手前のためなら他人の命さえ奪う」


「……、下川」


「てめぇは言ったな。俺等はプリザーブドフラワーだって。ご尤もだ。
俺等はいつまでも瑞々しい現状を保つために、何だって、それこそ他者の幸福や命を砕いて、手前の保存液にしちまうんだ。
那智、行くぞ」