「今度は抵抗もできないみたいだな。そうだよな、前回、あんだけ恐怖を味わったんだ。抵抗さえ忘れちまうよな」
「ァぅ…」
「だけどな、こっちも前回はお前が抵抗して逃げてくれたおかげで大目玉だ」
減給されちまったじゃないか。
吐き捨て、白銀に煌く刃先を那智の素肌に当てる男は、獲物を嬲るように那智の制服のボタンを凶器で切り取り始める。
「ゃ…」
小さな悲鳴を上げる那智はカッターシャツのボタンを取られることに、初めて抵抗を見せた。
母親達から散々嬲られた体を見られたくないんだろう。
だけど抵抗は弱々しい。
糸も簡単に抵抗を捻じ伏せられる。
今すぐ助けにっ…、もう少しだけ待て、俺。
俺は手の平に爪を立て、周辺を見やった。
あ、向こうに組み立て用の鉄パイプが山のように積みあがってる。
「そういう趣味は無いけど、ふーん、ま、いい体じゃね? 小汚い傷痕を抜かしたらな」
バリッと下着シャツを裂いた男は、那智の体を見るや否や口笛を吹く。
外界の冷風と嘗め回すような視線に身悶えながら、那智は怯えきった目で男を見つめた。
「兄貴とヤッてんのか? 細い体躯なら抱きやすいだろうけど…、男を抱く男の気持ちなんざ分からないぜ。胸ねぇし」
「ぅぅっ…」
「最後ついでに経験してみてもいいが、こっちも時間がねぇもんでな。さっさとお陀仏してもらうぜ」
―…恨むなら、俺を雇った手前の母親を恨めよ。
瞠目する那智、果物ナイフを振り翳す男、忍び寄り鉄パイプを真横に振る俺。
手ごたえあり。
メキメキッと骨が軋み、折れる音、悲鳴、飛ぶ通り魔男の体、落ちる果物ナイフ。
全部が心地良い雑音(ノイズ)だ。
ペロッと上唇を舐め、俺は鉄パイプを投げ捨て果物ナイフを拾い上げた。



