「福島、ちょっと来い」
「え? 何よ」
鞄を肩に掛ける俺を、福島は淡白に見やる。
俺は恥じらいを装った。
「場所を変えて話があるっつってるんだよ。大事な話だ。二人きりで話がしたい」
目を泳がせて頬を掻く。
名演技だな、俺。
おぇっ、こんな自分に吐き気がしてくる。
態度の変わりように福島は混乱、んでもって「熱でもある?」訝しげに俺を指差してきた。
「さっきからわけ分かんないこと言ってるけど…、あんた、気でもおかしくなった?」
「いいから来いよ。ふく…、朱美」
俺はわざわざ下の名前で、しかも甘ったるい声で福島を呼んで、手首を掴んで公園の外に連れ出す。荷物を持たせてな
那智は俺等に構わず、ブランコに乗って遊んでいた。
弟くんはいいのかとか、なんで下の名前で呼ぶのかとか、熱が出たのかとか、キモイとか、大変失礼な事を口にする福島を公園の外に連れ出した後、俺は福島と住宅街の塀の一角に身を隠す。
「ちょっ、」
一体全体どうしたのだと喋ろうとする福島の口を手の平で塞いで、俺は静かに公園に視線を投げる。
ギィ…、ギィ…。
ギィ…、ギィ…。
連鎖する錆びついたブランコの悲鳴が公園に響いている。
いつまでも公園に響いている。
ギィ…、ギィ…。
ギィ…、ギィ…。
ギィ…、ギィ…。
俺等が戻ってこなければ、きっといつまでも響いているであろう錆びついた悲鳴。



