一つ目の焼きドーナツから二つ目の焼きドーナツを食べる頃。
先に焼きドーナツを平らげてしまった那智が暇そうに足をばたつかせていた。
その内、公園の遊具に目を向け、
「兄さま。ブランコ」
指差し、乗ってきてもいいかと尋ねてくる。
公園内なら大丈夫だろ。
ブランコまで目と鼻の先だしな。
誰かが襲ってきたとしても(考えたくねぇけど)、直ぐに助けに行ける範囲。
俺は許可を出して、「怪我はするなよ」と注意。
うんと元気よく頷く那智は、食べ終わったらこっちに来て欲しいと強請ってきた。
しょうがねぇな、笑う俺に満足した那智はベンチから降りて誰も乗っていないブランコに向かって駆ける。
嬉しそうにブランコに乗る姿はすんげぇ、
「可愛いわね。那智くん。あんな子、弟に欲しいわ」
………。
俺は福島にガンを飛ばした。
てめぇまさか、那智を狙ってないだろうな?
それだったら俺は女であれ、それなりの手を打たせてもらうつもりだが。
「ったく、そんなに睨まないでよね。取るわけじゃないんだから」
「当たり前だ。取ってみやがれ。タダじゃ済まさねぇぞ」
「女の子に優しくする気持ちは無いわけね。あんた」
「俺は弟以外に優しくするつもりはねぇ」
「ブラコン」不機嫌になる俺を見て、福島が憮然と肩を竦める。
どうとでも言えよ。
俺は鼻を鳴らして抹茶味の焼きドーナツを頬張る。
あー美味い、抹茶焼きドーナツ。
「そういえばさ、下川。あんた、最近大学来てないでしょ」
不意に飛んでくる質問。
なんで来ないの?
聞いてくる福島に俺は鼻を鳴らして、
「てめぇにはカンケーねぇだろ」
カチンときたのか、福島は俺にガンを飛ばしてきた。



