「人って独りじゃ生きられないじゃん?
だから他人を信用するんだと思う。
沢山の人と繋がっておきたいというか、なんというか、人って独りにはなりたくないんじゃないかしら?
結局人は独りじゃ生きられない弱い生き物だし」
「ふーん、だから群れるのか? やっぱわかんね」
「あんたは閉鎖的な世界観しか持ってないから、理解できないんじゃない?
普通は世界観とか視野とかが成長するにしたがって広くなる。
人間は貪欲な生き物だから、沢山の人と繋がっておきたいの。
別にあんた達を否定するつもりは無いけど、あたしから見たら、あんた達って物寂しい世界にいると思う」
やっぱり理解が出来なかった。
どうして俺達の世界が物寂しいのか…、一人に囚われているからか?
別にいいけどな。
俺は生まれた時から独りだったし、那智が生まれるまで独りだったし。
「それに、信用するのは簡単よ。
疑って傷付くより、信用して傷付いた方が傷は浅いし。
あんたがムカつく最低最悪のブラコン男じゃなきゃ、あたし、あんたに信用を置いても良かったかも」
笑声を漏らしながら軽快な足取りで前へ前へと歩く福島と、放った言葉に、俺は妙な気持ちを抱いた。
やっぱわかんね。
他人を信用する、その気持ち。
それにわかんね。
福島が、なんでこうも俺に関わってくるのか。
高村彩加のことで憤ってたくせに、なんで俺に笑いかけてくるのか。
他人って理解できない。
他人って意味不明だ。
他人って不可解な生き物だ。
そう思うと、那智の顔が早く見たくなった。
那智しか俺のことを理解できないし、俺も那智のことしか理解できないから。
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