この女、すこぶるメンドクセェ。

苦虫を噛み潰す顔を作る俺は早足で歩く、が、その前に福島に腕を引かれて道から逸れた。

「おい!」

怒鳴る俺を綺麗に無視して、

「あそこに焼きドーナツがある」

ちょっと寄って行こうと綻んできた。


「ふざけるな、俺は那智を迎えにっ」

「だから、弟くんの手土産として買っていけばいいじゃないの。花だけじゃお腹は満たされないでしょ。
あの子、甘い物好きでしょ?」


なんで分かるんだよ。

眉根を寄せる俺に、ファミレスでケーキを二個も頼んでたら分かると福島は一笑。


俺の意見関係なしに、焼きドーナツを売っている店へと立ち寄りやがった。
煮える気持ちを抱く俺に対し、

「ピリピリしない」

福島は憮然と肩を竦めて店員にドーナツを注文していた。

六つも買う福島に、よく食べる女だって悪態を付く。
そしたら福島は何を言ってるのだと首を傾げた。


「あたしが全部食べるわけないじゃない。
あんたと弟くんの分も入ってるわよ。一人二個ずつ。OK?」

「は? 俺等の…、あ、おい、福島」


買った焼きドーナツの入った袋を片手に、さっさ歩き出す福島を俺は追う。

なんでこんなヤツにペースを掻き乱されてるんだよ、マジ気に食わねぇ。


ムシャクシャした気持ちを抱いてた俺だけど、ハッと我に返って気持ちを切り替える。


昨日もこうやってムシャクシャしたまま那智に会っちまったから、あいつに八つ当たりしちまったんだ。
もうあいつを傷付けたくはない。


俺は気にすることをやめた。

福島がどう行動しようと、俺には関係のないことだから。





「下川、あんたさ。

あたしにさっき、聞いたでしょ?
どうして他人を信用できるのかって」





前を歩いていた福島が振り返って俺に視線を投げてくる。


「バイト中考えてみた」


福島は意味深に笑い、俺にキッパリ言う。