「ふーん、じゃあ、これも那智に買っていこうかな。
あいつ、手入れはしっかりとする方だし」
喜んでくれるかもな。
俺はプリザーブドフラワーに目を配って、どれにしようかと迷う。
「那智くんならこれね」
言うや否や、箱に詰まれた桃と白の薔薇のプリザーブドフラワーを手に取ってレジに向かう。
「あ、おい!」
なんでてめぇが勝手に決めるんだよ。
俺は舌を鳴らすけど、確かに福島の選んだプリザーブドフラワーは那智に似合いそうだった。
何となく悔しい気分を味わう。
けどグッと堪えて、それにすることにした。
那智に本当に似合いそうだったんだ。
会計をしていく福島は手早い手付きでレジを打つ。
「包装もしておくわね。あ、包装代、掛かるから」
「てめぇ…、好き放題してくれやがって」
「いいじゃない。那智くんのために包装代くらい払ってやっても。ねえ、お兄さん」
ニヤッと口角をつり上げる福島に、カチンときたのはその直後。
くそっ、俺がそんなにドケチな人間だとでも? 那智のためなら幾らでも払ってやるよ。
俺は無造作に万札を出して、早く釣りをくれと急かした。
「はいはい」
笑う福島は、札と小銭を俺に手渡す。
その後、福島は包装を始めた。
あーくそ、なんで俺、こんなに福島にペース乱されてるんだよ。
普段だったらスルーできるっつーのに…、こんなに他人と会話することもねぇし。
それに…、あいつはファミレスの一件に関わってるんだぞ。
惑わされるなっつーの、俺。
他人に惑わされたから、昨日、俺は那智に暴力を振るったんだろ。
反省しろよ、俺。
「プリザーブドフラワーってあんた達、兄弟みたいね」
不意に福島が口を開く。
プリザーブドフラワーが俺達みたい? どういうことだ?
視線を投げれば、包装作業を進める福島の姿。
手早い作業、そして器用なことに口も同時動かす。



