「確かに個々の家庭事情があるとは思うけど…、あんたの弟くんに対する執着心は目を瞠るわ。
ねえ、どうしてそんなに執着するの。
弟といえど、あんたはあんた、弟は弟でしょ」
背後からそう言われ、俺は思わず振り返って答える。
「ちげぇよ。
あいつあっての俺、俺あってのあいつ、だ。
あいつが仮に消えれば、俺も同じように消える運命だと思う。
俺はあいつしか信用が置けないし愛せない。
そういう意味で俺は狂ってるのかもしんねぇな。
異常者、言われりゃそうかもしんねぇ」
「下川…」
「なあ、福島。
逆に聞きたい。
てめぇはどうして、他人なんざ信用できるんだ?
ダチのために動くてめぇの気持ちも分からないし、優一や浩司のように他人と和気藹々気を許して話す気持ちも分からない。
血縁関係もねぇ他人を安易に信用できる真似、俺には到底できそうにねぇし、理解もできそうにねぇよ。
なあ、なんでだ?
どうしててめぇ等は他人を信用できる?」
素朴な疑問を投げ掛けて、俺はサボテンを三つ、適当に選ぶとレジに向かった。
答えは期待してなかったし、向こうも答えられないと踏んでいる。
俺の疑問は簡単に答えられるようなものじゃない。
と、俺はとある棚に惹かれた。
カゴや箱に飾られた花々。
それはギフト用のようだが、とても綺麗に飾られていた。
好奇心で立ち寄る。
薔薇やひまわり、ジャスミンにダリア、そんな花々が箱やカゴに押し込まれ飾られている。綺麗だった。
「それ、プリザーブドフラワーって言うのよ」
「プリザーブドフラワー?」
何だそりゃ?
隣に並んでくる福島に視線を投げれば、
「インテリアフラワーとしてよく使われるわ」
長時間保存ができる花だと教えてくれた。
ドライフラワーと異なって、見た目も触り心地も生花そのものの花だとか。
美しい姿を延々と保つために、またその姿を楽しむための花だと福島は言う。
寿命が長いらしく、保存状態が良ければ十年以上持つらしい。
逆に保存状態が悪ければ、直ぐに色褪せてしまう花らしい。



