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【駅前の花屋前にて】


― Flower Life ―



「此処か。品揃えも、草花の健康状態も良いって評判の花屋は。
確か名前は“Flower Life”…、ん、あってるな」



俺はメモ紙と看板を交互に見やって、うんと一つ頷く。

バイトを終えた俺は電車駅前の花屋に足を運んでいた。


理由は那智のために観葉植物を買うため。


昨日、那智に暴力を振るっちまった上にあいつの観葉植物を傷付けちまったから。

お詫びに観葉植物を買ってやるって約束したんだ。

それだけじゃ俺の気は済まないけど、これ以上気にしてると那智に怒られちまう。


那智はホントに優しい。


俺の暴行を笑顔で赦してくれるんだから…。



『兄さまは無闇におれを傷付ける人じゃないです。
おれはそれを知っています。親とは違います』



那智の向けてくれた言葉に俺は表情を崩す。


うんと奮発していこう。


那智の喜ぶ顔が見たいから…、今日は那智、学校に行ってるんだよな。


親父が行かせろって煩かったし…、親に連絡がいってるのはチョイ面倒だなって那智を中学まで送った。


帰りも迎えに行くつもり。


ひとりで帰らせられるわけねぇだろ。

まだ事件も解決してないのに。


何より、ファミレスの一件、何も解決してねぇしな。


あの四人の中に…、何らかの理由で俺等に危害を加えようとしている奴がいる。


クシャリとメモ紙を握り締めた俺は、それをジーパンのポケットに捻り込む。