シャツを巻くって、真新しい痣達を一つひとつ丹念に舐めていく。
腕も、胸部も、脇腹も、背中も。


あ、なんか性交してるみてぇだな。


変なところに気付いた俺だけど、敢えて口には出さず那智のシャツを元通りに直して、最後に那智の頬に触れる。


まだ赤く腫れている両頬を触って、俺は那智と視線を合わせた。


「那智、俺がまた暴力振るった時は…、殺してもいい」


それだけ俺のやったことは重罪だ。

だから那智に誓う。
暴力は振るわない、もしも振るったら、構わず抵抗していい。最悪殺してくれても構わない。と。


目をパチクリさせる那智は、次の瞬間、一笑。


「だったら、おれも死ななきゃいけないじゃないですか。
兄さまはおれを独りにするつもりですか?」


―――…弟は本当に俺を愛してくれる、唯一の存在だ。

何より、俺の望むことを、叶えてくれる。言ってくれる。与えてくれる。


俺は那智の両手に手前の手を重ねて、しっかり結ばせる。
ゆっくりと那智に体重を掛けて、首筋に顔を埋める。

くすぐったい、そんな笑い声が耳元で聞こえてきた。


「愛してる」


俺は那智に告げる。

狂おしい感情を那智にぶつける。


「愛してる、那智」


誰にも取られたくない、最愛の弟に何度もなんども。


血を分け合った弟をより束縛するために、結ばれた手をいつまでも解けないように、愛してるとぶつける。


恋人同士が愛していると言うように、

俺等、兄弟同士も愛してると言う。