両手を広げてくる那智はいたく真面目だ。
いつも以上に愛せって…お前な。
けど那智はほらほらほら、と急かしてくる。
「兄さま、知ってます? 傷って薬を使えば、元通り治るものなんですよ?
例えばそれが、元通りにならなかったとしても、薬は何処かしら傷を癒してくれるものです。
おれを傷付けたと思うなら、兄さまがその傷を癒して下さい。
兄さましか癒すことができません」
だっておれ、兄さまのものですから。
真っ直ぐ俺を見つめて、綻んでくる那智に俺は意表を突かれた。
そしてようやく、自然に笑みを浮かべることが出来る。
「ン」俺は軽く返事をして、那智をゆっくりと押し倒す。
傷付けたなら、その分、愛して癒せばいい。
那智は俺にそう教えてくれた。
同感だ。
俺は那智を傷付けた。なら、その分、那智って家族を愛す。
「那智…、俺はもう…てめぇに暴力を振らない。二度と振らない」
那智の右腕の袖を巻くって、痣のある患部をそっと指でなぞる。
「俺は他人の言葉に惑わされちまった。
他人なんざ信じられねぇって言っておきながら…、不覚にも他人の言葉に動揺しちまったんだ」
「そんな日もあります」
「何があったか、聞かないんだな」
「兄さまがお話したいなら、おれ、喜んでお聞きします」
「いや…、大したことじゃねえから」
指でなぞった後、俺はそこに優しく舌を這わせた。
「痣って舐めて治るもんですか? なんか癒しの意味が違う気がしますけど」
ご尤もな意見に、
「気持ちだ気持ち。これが俺なりの愛し方」
俺は目元を和らげる。