「―――…兄さま、美味しいですね」
散々泣き続けた後、俺等は遅めの夕飯を取る。
冷え切ったハンバーガーにポテト、チキンナゲットに、氷で薄まったオレンジジュース。
美味しいとは程遠い夕飯だけど、那智は美味い美味いと喜んで食べている。
それは演技じゃなく、本物の嬉の顔。
腫れぼったい瞼をそのままに、那智は美味しそうにハンバーガーに齧り付いてくれていた。
いつもの笑顔に俺は弱々しく微笑を返す。
他人と喧嘩しても罪悪感さえ湧かないのに、那智の場合だと罪悪感で押し潰されそうだ。
なんで那智に当っちまったんだろうな。
那智に手を上げるなんざ最低だ。
もう二度としねぇ。
懲り懲りだ、こんな思い。
俺は食事を進めている那智に手を伸ばして頭を撫でようとした。
けど、触っていいのか分からなくて、伸ばした手は宙ぶらりん。
だってな…、一応この手でぶっ叩いたわけだし…。
そう思ってたら、那智がこっちを見てきた。
バッチリ目が合う。
俺の手と顔を交互に覗き込んだ後、ニィっと笑って擦り寄ってきた。
―…何事も無かったように。
嬉しいような申し訳ないような。
俺は失笑を漏らしながら、那智の頭に手を置いた。幸せそうに那智は綻んでくる。
「那智、悪かったな。もう二度と手は上げないから…、誓う」
俺を見上げてくる那智はうん、と小さく頷いた。
あまり気にしてない素振りだけど、俺の気が済まない。
何かお詫びにできることはないか…。
那智を見つめていると、
「兄さま」
俺の気持ちを見越したように那智が笑ってくる。



