× × ×
「―――…久しぶりだな、治樹」
「あんたは…」
それは午後8時を回った夜のこと。
バイトを終えた俺は那智に電話をしようと携帯を取り出す真っ最中だった。
俺のバイトはファーストフード店。
自給はわりと安いけど、シフトが組みやすいからこの職を選んだ。那智との時間も作りやすいしな。
ようやく仕事を終えた俺は私服姿で店内に入り、そのまま飯をそこで買って行こうと思い立って携帯を取り出していた。
那智を留守番することさえ今は恐いけど、生活もあるからバイトの時だけは家に置いている。
バイト先に連れて行こうとも考えたけど、俺が仕事をしている間、那智は一人で店内に身を置くことになる。
俺は調理場担当だから厨房から先に出る事は出来ない。
連れて来るよりは、家に置いた方が安全だと考えた俺は仕方がなしに那智を家に置いてきた。
再三再四、訪問者が来ても開けないことを注意して。
それに…、犯人を捜さないといけねぇからな。
相手の出方と、チンピラ等のルートを掴まなきゃなんねぇ。
それには下準備が必要不可欠。
行動を起こすには那智を傍に置いておくわけには行かない。
バイト帰りに少しだけ下調べして、家に帰宅する予定だった。
けど、予定は一気に崩れてしまった。
店内に入った途端、まるで俺の登場を待ち構えていたかのようにスーツを身に纏ったリーマンが現れた。
俺の親父、だった。