「下川?」


どうしたの?

福島に声を掛けられるけど俺は反応が返せなかった。
どうなってやがる、なんで全員薬が混ぜられてるんだよ。


―…いや、誰かが嘘を付いてる可能性もある。


実際俺の目で四人が眠っちまったところを目撃したわけじゃない。
誰かが嘘を付いていると考えるのが筋。


俺の行動を見越しての口実を作りやがったのか?


だったら大層、嫌味な策略家だな。


「―…どいつもこいつも、俺から那智を奪おうとする。
だから他人なんざ嫌いなんだ。


俺に喧嘩売ったこと、後悔させてやる。
徐々に追い詰めてやるさ」



クッと笑いを殺した俺は那智の腕を掴んで歩き出す。

「ちょっと下川!」

どうしたのよ、福島の声も安河内の声も俺には届かない。

「兄さま?」

何処に行くのかと聞く那智の声にだけ、俺は反応を返す。


「那智、大学を出るぞ。今日の予定は変更だ」

「え? でも兄さま…、授業は? 出席関係あるんじゃ」

「いい。とにかく今日はもう大学を出るぞ」


まだ何も受けてないのに…。

那智のぼやきを聞き流して、俺はこれからのことを考えていた。


いつまでも考えていた。


俺と那智が永遠にふたりぼっちの世界になれるための未来を掴むために、



これからどうしてばいいのかを、



いつまでも、いつまでも。



⇒03