握り拳を作って福島を睨んでいると、「で?」俺に疑問が投げ掛けられた。
「で」だけで俺は理解する。
なんで那智を大学に連れて来たんだって言いたいんだろう。
俺の通う大学はマンモス校だから、敷地はだだっ広く、私服さえ身に纏えば容易に潜り込める。現に那智も容易に潜り込めた。
一般人も出入りする有名大学だ。
那智ひとり簡単に大学に潜り込めるだろう。
俺は那智を見下ろす。
なんで那智を連れて来たか…、ンなの決まってるだろう。
留守番させたくなかったからだよ。
俺の目の届く範囲にいて欲しいが故に連れて来た。そんだけ。
どうしても、昨日の事件が胸に引っ掛かってるんだ。
もしも那智を家に置いてったら俺の居ぬ間に襲撃…、想像しただけでゾッとした。
留守番させられたもんじゃなねえって、那智を大学に連れて来たんだ。
昨日の四人が大学にいると思うから、危険っちゃ危険だが、とにもかくにも俺の目の届く範囲にいて欲しい。
これから那智を大学の図書館に置いて、俺は講義を受けに行くつもりだ。
大学の図書館になら人もいるしな。
誰でも出入りできる市民図書館よりかは安全だと思う。
クシャリと那智の頭を撫でて、
「弟が大切だから連れて来ただけだ」
傍に置きたい旨を俺は福島に告げた。
面食らう福島だったけど、一呼吸置いて口を開く。
だけど福島が何か言う前に安河内が俺等の姿を見つけて声を掛けてきた。
「朱美、下川くん。え? 那智くんも一緒? 大学生じゃないでしょ」
安河内は驚愕していた。
福島は大袈裟に肩を竦めてみせる。
「そーなの。大事だから連れて来たんだって。下川のブラコンっぷりには目を瞠るわ。
あ、そうそう友香。
ごめん、一昨日借りたDVD見てないんだ。
昨日見ようと思ったんだけど、メチャクチャ眠くて。
あたし、着替えずに絨毯の上で寝てたわ」
「朱美も? 実は私も昨日、すっごい睡魔に襲われて。
録画してたドラマを観ようとしてたのに…、リビングで爆睡。
疲れるようなことしてないのに」



