「キスより抱き締める方がよっぽど嬉しい俺がいるんだが、那智、なんかドキドキしたか?」
イマイチ、キスの良さが分からなくて俺は肩を竦める。
那智も肩を竦めた。
「うーん…、いいえ。
どっちかっていうとギュッとしてもらう方が好きです。でも少しは意識しましたよ」
「俺もだ。ドキドキじゃねえけどな」
「はい、ドキドキじゃないんですけど…、だけど、やっぱりくっ付いてる方が好きです」
本当にそうだ。
くっ付きあっている方が触れ合ってる感じもするし、
―…嗚呼、そうだ。
俺、家に帰って那智が起きたら、思う存分に抱き締めてもらうんだった。
触れて触れられてもらうんだった。
那智は綺麗だから、他人と違って綺麗だから。
他人なんざ…他人なんざ汚い。
今日見た他人は特に薄汚れていた。
思い出しただけでも反吐が出る。
「那智、那智、那智、那智、なち」
「兄さま? どうし―…兄さま、大好きです。きて下さい」
俺の顔を覗き込んだ那智は微笑を零す。
まるで俺の不安を、嫌悪を、すべてを見透かしているよう。
シャツの首を引っ張って、自分から首筋から肩口に掛けてそこを露にする。
ゴクリと喉が鳴らした俺は誘(いざな)う肌に吸い寄せられた。
既に傷が付いているその肩口は、俺が噛んで傷付けたもの。
悪いとは思ってるけどやめられない。
俺は首筋から肩口を一舐め。
舌を這わせた後、小さな肩口に、肉体に、肌身に齧り付いた。



