だから早く取り戻さないとな。
俺と那智の平穏に満ちた世界、二人っきりの世界、ふたりぼっちの世界を。
他人にどうこう言われる世界も、他人に干渉される世界も、他人に関わられる世界も俺はいらねぇ。
うん、俺は一つ頷いてパソコン画面に視線を戻した。
これからどうしていくかの計画を念密に立てるために。
カタカタカタ―――。
カタカタカタ―――。
カタカタカタ―――。
キーボードを叩いてどれほどの時間が経ったか。
カーテンが仕切っている窓の向こうはまだ暗い。
デジタル時計に目を向ければ、時刻は午前四時前五分。
もうそろそろ明るくなる筈だ。
少し休憩でも入れて、珈琲でも飲むか。
うーんと背伸びをして凝った肩をほぐしていると、「兄さま」寝室から声が聞こえた。
振り返れば、目を擦って居間にやって来る弟がそこにはいた。
頭が重たいと呻く那智は(多分薬のせいだろう)、何をしているのかと俺に聞いてくる。
パソコンを閉じて、俺は大学のレポートだと嘘を付いた。
那智にチンピラ襲撃事件は伏せておくつもりだった。
余計な心配を増やさせるだけだから。
「那智、まだ三時だぞ。寝てろって」
「んー、頭が重たいですし…、なんかすっごく寝た気分です。
ふぁ~…、兄さまは? ずっと起きてたんですか?
というかおれ、途中から記憶が…っ、うわっ!」
覚束ない足取りだった那智の腕を引いたせいか、那智はすっ転んだ。
尻餅つく那智の体を畳に押し付けて、跨いで、見下ろしてみる。
見上げてくる那智は、ようやく意識がはっきりしてきたのか俺を呆然と見上げてきた。
この体勢、所謂押し倒し体勢。
ドラマじゃこのままイヤンな展開になる体勢を、俺は取ってみた。
なんで取ってみたか?
んなの、気分とノリでだ。
何となく、こうしてみたくなった。
浩司や優一が結構なまでに俺達を、恋人にしたがってたし…。
もしかしたら気持ちが変わるかもって、やってみたけど。



