俺は咄嗟に那智を抱えて、ベンチから降りると近くの薄暗い公衆便所に逃げ込む。
敢えて女子便所に逃げ込んだのは、俺達“男”がそこには隠れないであろうという思考の裏を掻くため。
幸いにも、女はいなかった。
心置きなく身を隠せる。
眠る那智を腕に抱き締めて、俺は近付いてくるバイク音に耳を傾けた。
こっそりと女子便所の入り口縁に立って外の様子を窺う。
公園向こうの柵にバイクが三台。柵前で停まっている。
誰かを探してるみてぇだ。
エンジンの音が煩くて聞こえねぇけど…、三人のチンピラっぽい奴が駄弁って、周囲をキョロキョロと見回している。
不意に内、金と茶に髪を染めたチンピラもどき二人がバイクから降りて公園に足を運んできた。
こっちに来る…か…。
俺は女子便所の奥に那智を抱えて逃げ込んだ。
最奥の洋式トイレの個室に飛び込むと、敢えて扉を閉めず、個室で息を潜める。
男子便所の向こうに気配、足音、そして会話が聞こえてきた。
「いねぇな。奴等を付けてた筈なんだがな。
公園に入ったまではちゃんと富樫(とがし)さんが情報をキャッチしてるんだ。
見つからないとやばいだろ。
下川って奴の家知らねぇんだから、ここらで片を付けとかなきゃ報酬チャラだぜ。
まさか、俺等に気付いたか?」
ガタ、ドン―。
向こうで物音が聞こえる。
個室を一つひとつ確かめてるようだ。
「まさか。奴等、能天気におてて繋いでたろうよ。野郎同士で気持ち悪ッ。
ま、薬盛ってるそうだから、そろそろ効いてくるんじゃね? 兄貴に盛った薬」
「兄貴の方を眠らせちまえば、後はどーにでもなるしな」
「道端で眠りこけてたりな」
有り得る有り得る。
薄壁一枚の向こうから聞こえてくる笑声。
それは腹立たしく、耳障りな雑音だった。
俺は会話に目を細めた後、眠りこけている那智に目を向けてギュッとキツク抱擁した。
声無き声で、口を動かし、那智に言う。
敢えて女子便所に逃げ込んだのは、俺達“男”がそこには隠れないであろうという思考の裏を掻くため。
幸いにも、女はいなかった。
心置きなく身を隠せる。
眠る那智を腕に抱き締めて、俺は近付いてくるバイク音に耳を傾けた。
こっそりと女子便所の入り口縁に立って外の様子を窺う。
公園向こうの柵にバイクが三台。柵前で停まっている。
誰かを探してるみてぇだ。
エンジンの音が煩くて聞こえねぇけど…、三人のチンピラっぽい奴が駄弁って、周囲をキョロキョロと見回している。
不意に内、金と茶に髪を染めたチンピラもどき二人がバイクから降りて公園に足を運んできた。
こっちに来る…か…。
俺は女子便所の奥に那智を抱えて逃げ込んだ。
最奥の洋式トイレの個室に飛び込むと、敢えて扉を閉めず、個室で息を潜める。
男子便所の向こうに気配、足音、そして会話が聞こえてきた。
「いねぇな。奴等を付けてた筈なんだがな。
公園に入ったまではちゃんと富樫(とがし)さんが情報をキャッチしてるんだ。
見つからないとやばいだろ。
下川って奴の家知らねぇんだから、ここらで片を付けとかなきゃ報酬チャラだぜ。
まさか、俺等に気付いたか?」
ガタ、ドン―。
向こうで物音が聞こえる。
個室を一つひとつ確かめてるようだ。
「まさか。奴等、能天気におてて繋いでたろうよ。野郎同士で気持ち悪ッ。
ま、薬盛ってるそうだから、そろそろ効いてくるんじゃね? 兄貴に盛った薬」
「兄貴の方を眠らせちまえば、後はどーにでもなるしな」
「道端で眠りこけてたりな」
有り得る有り得る。
薄壁一枚の向こうから聞こえてくる笑声。
それは腹立たしく、耳障りな雑音だった。
俺は会話に目を細めた後、眠りこけている那智に目を向けてギュッとキツク抱擁した。
声無き声で、口を動かし、那智に言う。



