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最悪だって思える外食を過ごした俺は、那智を連れて帰路を歩いていた。
くそっ、なんで他人と飯なんて食わなきゃいけないんだ。
飯が不味くなる。
違った、飯が不味くなった。
飯が不味かった。
その反面、那智の俺に対する気持ちをあいつ等に曝け出してくれたおかげで、俺は酷く安堵した優越感に浸っていた。
あいつ等、まるで檸檬を丸呑みしたような顔で那智の気持ちを聞いてたな。
それが愉快でならない…って思うのは、俺の性格が大概で歪んじまってるせいだからだろう。
俺は那智を一瞥する。
俺以外の人間とあんなに喋ったことないから、喋り疲れたんだろう。疲労の色が窺える。
悪いことをしたと思う一方で、俺は那智を試したかった。
本当に那智が俺のものになってくれているかっていうの。
さっき恋愛の話で優一の言うことを信じてたから…、ちょい心配だったんだ。
だから捨て身承知の上で那智を置いて行った。
身を引き裂かれそうな思いだったけど、気持ちを知るためだ。仕方が無いことだった。
でもどっかで確信していた。
那智は俺を裏切らない、予想以上の答えをあいつ等に突きつけてくれるだろうって。
思ったとおり、那智は想像以上の答えを出してくれた。
歪んだ感情が歓喜の声を上げている。
「(誰にも渡さねぇよ。那智は誰にも、な)
ん? どうした那智」
那智と手を繋いで歩いていた俺は、歩調が極端に遅くなる那智に気付く。
声を掛ければ、とろんとした目をこっちに向けて、那智が欠伸を一つ零した。