おれは唖然としている福島さんに、更に気持ちを告げた。


「兄さまが…異常だと仰ってますが…。
じゃあ、きっと弟のおれも異常なんだと思います。

兄さまの異常…おれにはちっとも理解できない…ですから。

確かに傍から見れば、おれは…束縛されてるのかもしれません。


でも、本当はそうじゃないんです。


おれはおれが望んで…兄さまの傍にいるし、兄さまの望むことをしてる。
同時に…、おれがそうしたいって望んでる。

おれのすべては…、今、兄さまのものです。
感情も…、時間も…、おれ自身も。

兄さまのものであって…、おれのじゃありません。
だって…、兄さまにあげちゃいましたから。


だけどおれ…、とても幸せですよ。


不幸せ?
そんなことありません…、幸せには違いないんです。

兄さまの執着心を執着だって思っていない時点で…、おれも兄さまに執着してる。
そう思ってます」


ニコッと福島さんに笑みを向ける。
絶句している福島さんは、他の人達に視線を投げていた。

何もかもが信じられない、そんな顔を作ってる。


それを理解できないおれは、やっぱり異常なんだろうか。


でも所詮は他人の言葉だから…、おれは兄さまの言葉を誰よりも、何よりも信じてる。





「―――…あーあ、あいつ等、面食らってやがる。

ま、那智に何を言っても無駄だけどな。
俺の言うことにしか耳を傾けないよう、教えて込んでるんだから」


そして、那智、てめぇはいい子だ。

やっぱてめぇは俺をぜってぇ裏切らない…可愛い弟だよ。



「俺のものだって、これで分かっただろ? 那智は俺のだ」



おれ達の死角に身を隠して、おれ達の会話に耳を傾けている兄さまに、おれ含む誰もが気付かなかった。



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