(旧)ふたりぼっち兄弟【BL寄り】

でも優一さんは気にすることなく、おれに話しかけてきた。


「怪我の具合はどう?
あ、ピアスし始めたんだな。那智くん。
……ちょ、これさ、治樹と同じじゃん」

「あ? 悪いか?」


兄さまはどすのきいた声で唸った。
あんまり見られない、兄さまの一面だ。


「いや悪くないけど、手までしっかり…、治樹ってやっぱ同性愛者だったんだな。しかもお相手は…。
いや、俺はそんなことで治樹を差別するような男じゃないぞ。
うん、恋愛も人それぞれだしな。良い恋愛しろよ、治樹」


あれ、兄さまが恋愛?

おれ知らないんだけど。

もしかしておれだけ知らされてない?
だって浩司さんも知ってるようなカンジだし。


……おれに言えなかった? とか。


あれ?
あれ?

…あれ?

すっごく動揺してるおれがいる。


いや、兄さまが恋愛してもいいけど…、でも教えてもらえなかったのは凄くセツナイ。


というか!

まず相手は誰!
兄さま同性愛者ってっ、あっれー?!


混乱したおれはついに気持ちが爆ぜた。


「うぇーんっ、兄さまがっ、恋愛しちゃいましたー!
弟のおれに何も教えてくれないなんてっ。

そりゃ兄さまが『恋愛しない』言ってたから言いにくかったかもしれないですけどっ、でもでも教えてくれたってっ!

兄さま、おれのこと嫌いなんですかー!」


酷い酷い、喚くおれに兄さまは愕然と目を見開いてきた。

次の瞬間、素っ頓狂な悲鳴を上げて両肩を掴んでくる。


「ば、バッカ! 俺は那智以外何もいらねぇっつっただろうが!」

「だって今…、兄さま、恋愛ってっ…」


「俺は誰とも恋愛しちゃねえよ!
那智てめぇ、兄さまの言うことが信じられねぇのかよ!」


「ぅぅ…火のない所に火事は起きませんっ…もん!」

「……。それを言うなら火のない所に煙は立たない、だ。
那智てめぇ! 優一の言うことを信じてるんじゃねえぞ!

兄さまと優一どっちが大事だ!」