本気で心配してるんだけど、兄さまは物ともしない。
ヘーキヘーキの一言で流しちゃうんだ。
おれ、本当に心配してるのに。
兄さまは外出できないおれに気を配ってくれている。
どっさりと暇潰し用の文庫を買って来てくれたし、(あんまり嬉しくないけど)問題集も買って来てくれたし、観葉植物もお土産として買って来てくれた。
あ、問題集はちゃんとしてないと、兄さま、後でチェックしてくる。
調子が悪くて出来ない時はまだしも、サボったりしたら大変。
一度だけサボったことがあるんだけど、その時の兄さま、すっごく意地の悪い顔を作って、
「那智、兄さまにプレスの刑をされてみてぇだな。
ああ、それとも擽りの刑か?
―…いや特別刑を兄さまが用意してやる」
なんて言っておれを脅してきた。
え、笑顔が恐かった。
さすがに大好きな兄さまでも、あの時ばかりは恐怖を感じた。
悪魔が降臨したんだって思ったよ。
謝り倒して、二度とサボらないって兄さまに懇願したけど、しっかりとおれは特別刑は受けた。
特別刑は兄さま特製ごった炒飯。
これの何処が特別刑かって?
すっごい特別刑だ!
だって兄さま、冷蔵庫にある物を全部炒飯にぶち込むんだから!
最初は無難にハムや人参、ピーマン…、ジャムにマーガリン、キムチに、高菜、チョコレート。
とにかくぶち込めるもの全部ぶちこむ恐怖の炒飯。
マズイのなんのって、本人も絶対口にしない炒飯をおれに出してきた。
「半分でいいから」
なーんて言ったけど、実際、一口目で盛大に咽た。
それを見て兄さまは大爆笑。
腹抱えてヒィヒィ笑ってきた。
涙目になりながら炒飯を食べるおれを見ては爆笑なもんだから、もう二度とサボるもんか! って胸に誓った。



