【二章
愛憎は極彩色】
―――下川。
あんた、なんでそんなに那智くんに、弟くんに固着するの?
―――ナナシ女、じゃねえ、福島か。
こっちの家庭事情をどうこう言われる覚えは無いけどな
―――分かってるわよ、そんなこと。
―――じゃあ、なんで口出すんだ?
―――べつに…、なんとなくよ。
―――変な女。
―――ブラコン男に言われたくないわよ。
―――どう言われても結構だ。
―――…あんた達って、デキてるわけじゃないんでしょ?
確かに個々の家庭事情があるとは思うけど…、あんたの弟くんに対する執着心は目を瞠るわ。
―――つまり異常だって言いたいのか?
―――ご名答!
―――はっきり言ってくれる女だな。
―――ねえ、どうしてそんなに執着するの。
弟といえど、あんたはあんた、弟は弟でしょ。
―――ちげぇよ。
あいつあっての俺、俺あってのあいつ、だ。
なあ、福島。
逆に聞きたい。
てめぇはどうして、他人なんざ信用できるんだ?
血縁関係もねぇ他人を安易に信用できる真似、俺には到底できそうにねぇし、理解もできそうにねぇよ。
なあ、なんでだ?