那智が俺の耳に穴をあける。
それは、どんな形であれ那智が俺を傷を付けるということ。
俺が那智の耳に穴をあける。
それは、どんな形であれ俺が那智を傷を付けるということ。
そうやってお互いの体に傷を入れることで、確かな約束と証が体に刻まれる。
少なくとも俺にはそう思えた。
敢えて一組のピアスを分け合うのは兄弟だって証。
模った十字架はお互いの運命を、人生を、存在を、背負い合うって意味。
那智にはピアスの意味たち、教えてはやら無いけどな。
(さてと、那智の方はある程度いいだろ。
次は那智を襲った奴だな。
俺への私怨を那智にぶつけた。
俺から那智を奪おうとした。
俺と那智の生活を壊そうとした。
居心地の良い空間を決壊させようとした。
命より大事な弟を手に掛けようとした。
―…その報復はしっかりと受けてもらわないとな)
おっと誤って手に掛けないようにしないと。
那智と一緒にいられなくなる。
「兄さま、早速あけてみましょう。
先におれのして下さい。
おれ、兄さまの真似しますから」
思案に耽ってると那智に声を掛けられた。
ピアスの意味も知らず、あけて欲しいと強請る可愛い弟に俺は一笑する。
唯一、信用の置ける可愛い弟。
その弟を守るためなら、今の安穏とした生活を守るそのためなら、俺はどんなことだってしてやる。