「俺は本気の女は傍に置いたりしねーもん。

本宮の優しさは……、結果的におまえをキズつけてんだろ。

俺は、相手の気持ちと同じくらいの重さを返せるって自信がない限り、そんな安易な事しない。

気持ちの大きさ計んのもどーかと思うけど、明らかに重さの違う気持ち同士向き合わせたって、どっちかがキズつくのなんか目に見えてんだろ」

「……都築くん、実は優しいんだね。

っていうか、意外と恋愛に対して真面目なんだね」


まじまじと見ながら言うと、都築くんが顔をしかめた後、苦笑いをもらす。


「中1ん時だからな。本宮と彩香の恋愛目の当たりにしたのが。

……幸せの絶頂期ん時から、どん底まで見てたから。

イヤでも慎重になんだろ、あんなん見たら」

「……」

「まー、俺の性格上の問題もあるんだろーけど」

「うん。それが大きいよね」


笑いながら言うと、都築くんも笑う。


都築くんの胸にまで強く印象を残した先輩と彩香さんの恋愛。

それが、当事者の先輩には、どう残ってるんだろう。


今、何を望んでいる……?


パンを食べ終えた猫が、都築くんとあたしの間で丸くなる。


気持ち良さそうに眠る猫を、都築くんが優しい瞳で見ていた。