「そんな顔しないでよ。あたし、ホントに大丈夫……、」
「それって、俺のせいで?」
都築くんの胸に、顔を押し付けられる。
そこから直接、低い声が聞こえてきた。
「……なんで、都築くんのせいなの?」
「俺が告ったりしてるせいで、気持ちが集中できないとか」
「……あと、こんな風に抱き締めたりするせいで?」
返事をしない代わりに、都築くんがふっと笑う。
こんな風に、都築くんに抱き締められるのは、何度目だろ。
助けられたのは……、何度目だろう。
少しだけ落ち着くような。
だけど、ドキドキする都築くんの香り。
胸。腕。声。
都築くんの全部が優しく感じた。
「俺のせいで失恋に集中できねーんなら、ちょーどいいだろ。
集中できねーうちに吹っ切れれば、それに超した事ねーし」
「……なんか、すっごいつけこまれてる気がする」



