「……」
「だったら、正面切ってぶつかってきてくださいっ。
自分の気持ちが誰に向かってるか、そこまで分かってるなら、ちゃんとして……っ！
今行かなかったら、もう終わりにする事も、また始める事もできなくなっちゃうんだから……！」
そんなに好きなんだから。
離さないで、追いかけて。……彩香さんを。
「ちゃんと、彩香さんにぶつかってください。
……３年前、彩香さんがそうしてくれたみたいに」
涙を我慢してるせいで、喉が焼けたみたいに熱かった。
だけど、今泣くわけにはいかないから。
泣くのは……、先輩が走っていく背中を見てからだから。
先輩は、何かを耐えるように顔で、あたしを見ていた。
「……唯」
「あたし、先輩の背中を押したくて押してるわけじゃないですから。
それでも……、先輩に幸せになって欲しいから」
