「唯? どうかした?」
彩香がアメリカに帰る事、本当だったら言うべきだと思うし、今までの俺だったら多分言ってた。
―――けど、今は沢村がいるから。
沢村が望む事なら。
沢村を守るためだったら。
俺は、なんでもする。
“なんでもねーよ”
そう言おうと口を開きかけた時。
沢村がバっと顔を上げた。
そして。
「―――先輩。話したい事があるんですけど、今いいですか?」
「話したい事? ……大丈夫だけど」
「じゃあ、ついてきてください」
微笑んで言う沢村。
その横顔に迷いはなかった。
まっすぐに本宮を見つめる沢村が、今何を考えているのか。
考えただけで、喉の奥が苦しかった。



