「だけど、沢村さんは、知り合って間もないのに都築くんと笑いあったりしてて……、あたしができない事を簡単にしてたから……。
話しかけられなかったりするのは、自分のせいなのに……、全部、沢村さんに八つ当たりしてた」
「佐藤さん……」
「見張ってるみたいに、都築くんと沢村さんの後つけたりしてた。
遠くから見る事しかできなかったから、会話までは聞こえてこなかったけど……。
都築くんは、あたしが見た事ないくらい、沢村さんに笑いかけてて……。
あたし、悔しくて」
黙った佐藤さんが、肩にかけていた自分のカバンに手を入れる。
そして、見覚えのあるキーホルダーを取り出した。
「これも、あたしが盗ったの。
都築くんがあげるところ見てたから、羨ましくて……、ごめん」
赤いりんご型した手鏡のキーホルダーを、佐藤さんがキュっと握り締める。
目を伏せた佐藤さんの目から、涙が一粒床に落ちた。



