「……っ」
同じくらいの強さで叩くと、佐藤さんが一歩後ろによろける。
びっくりしてあたしを見る佐藤さんに言う。
「もう一発殴って」
「え……?」
「いいから速く!」
怒鳴るように言うと、けげんそうな顔をした佐藤さんが遠慮がちに平手打ちをして、ぺチって音がした。
そして、顔をしかめてる佐藤さんに、にこっと笑う。
「とりあえず、これでチャラにしよ。
文化祭の事とかお財布の事とか、みんなに迷惑かけた分はやり返させてもらったし。
残りの一発は、あたしが佐藤さん傷つけちゃった分」
「チャラ……? ふざけないでよっ! 元はと言えば沢村さんが……、」
「だから!! 全部佐藤さんの勘違いなんだってば!
本宮先輩とあたしは付き合ってなんかないっ!!
知ってるでしょ? 先輩が誰とも付き合わないって噂あるの。
完全なあたしの片思いだよ」
「でも、生徒会長は沢村さんだけ近くに置くじゃないっ!」
「告白して断わられそうになったから、『傍にいさせてくれるだけでいいから』ってお願いしたのっ!」
「え……?」
小さな声で呟いた佐藤さん。
ようやくあたしの言葉が届いたみたいだった。



