ポンポン文句を言ってた沢村が、少し黙る。 不思議に思って顔を覗き込もうとした時、両方の拳を俺の胸についた沢村が、もたれかかってきた。 沢村の髪が、俺の顔をかすめる。 「都築くんの、バカ……っ」 グーにした両手とおでこを俺の胸につけて、泣く沢村。 その背中に、腕を回して抱き締めた。 「……いいよ、バカでも」 「バカ……、たらし」 「はいはい」 すっかり大人しくなった沢村は、俺のYシャツをギュッと握り締める。 カサカサ音を立てて揺れる枝。 次に聞こえてきたのは、沢村の小さな泣き声だった。