「これ、おごってくれたのに最後まで飲めなくてすみません。

あたし、片付けてきますね」

「片づけなら俺が……」

「先輩はそこにいて!」


あたしを追うように立ち上がった先輩に、背中を向けたまま言う。


「……唯、」

「おごってもらったんだから、片付けさせてください。

だから……、先輩は座ってて。ね」


そう言って、振り向かないまま容器を拾い上げて走り出す。

先輩が何か言おうとしたのが分かったけど、気付かない振りをした。


これ以上先輩の隣にいると、みじめな気持ちになっちゃう気がしたから。

公園の端っこにあるゴミ箱の前まで来て、ようやく立ち止まる。


気持ちを落ち着かせようと大きく息を吐いたら、口の中をカフェモカの味がかすめていった。



残っていた涙が、静かに頬を伝った。