「安心なんかできねーだろ。

俺にとっておまえはライバルになるんだし」


俺が素直に認めたのが意外だったのか、本宮が目を見開く。

それから、ふっと笑った。


「そんなにあっさり認めるとは思わなかった」

「別に隠してるつもりもねーし」

「もしかしたら、自分でも自分の気持ちに気付いてないのかと思ってたけど、違ったんだな」

「自分の気持ちくらい気付けないようじゃマズイだろ」


そう答えると、本宮は「確かにな」って笑う。


「おまえも自分の気持ちぐらい気付いてんだろ?

彩香じゃなきゃダメだって事ぐらい、おまえ見てれば俺だって分かるし」

「……」

「いい加減、覚悟決めろよ」


驚いた顔をした本宮が、困り顔で微笑む。


「簡単に言うなよ」


強い南風が、中庭の草を揺らした。