「みんなが俺に注目してるうちに、唯のカバンから財布を抜き取ったのか……。
それにしても、もう少し説明文入れてくれないと困る。
いきなり財布渡されてもね」
「すぐ対応してただろ。あれで十分だし」
パックのコーヒーに、ストローを刺す。
本宮は俺をじっと見上げてから、ふっと笑った。
「まさかおまえが唯をかばうとは思わなかった。
自分から他人と関ろうとしないヤツなのに……。
どういう心境の変化?」
「別に。理由なんかねーよ。
……ただ、沢村はそんなヤツじゃねーから、それで」
「本当に?」
「どういう意味だよ」
挑発するように聞いてくるから聞くと、本宮は「別に」と言ってニヤリと笑う。
自分の真似されてんのが分かって、苦笑いしてからストローをくわえた。



