「…柚杞…」 小さな小さな、風にかき消されそうな声が私の頭に響いた。 智晴先輩は、智晴先輩の顔にあてた私の手の上に自分の手をおいて、私の手をそっと握った。 あぁ… 堕ちていくって、こういうことなのかな。 そんな冷静な声が、頭の中でこだました。 智晴先輩になら何をされたっていい、そう思った。 『キーンコーン…』 チャイムが鳴り響いたとたん、智晴先輩はハッとしたように私の手を離した。 「…ごめん。」 苦しそうに顔を歪めて、智晴先輩はただ… 謝った。 そして、中庭を去っていった。