「ほら、早く食べなさい」


とりあえず制服に着替え、髪を梳かしてから居間へ行くと、


既に隼人はご飯と目玉焼きを口の中に掻き込んでいた。


「おかわりがあれば言ってね」


母親がにこにこしながら隼人に言う。


「ありがとうございます」


隼人も隼人で、爽やかな笑顔で答えている。


「何が、『ありがとうございます』よ」


聞こえないようにつぶやいて、私は隼人の向かい側に座った。


「隼人君、今日夕飯は?」


「あ、いただきます」


「彩子、部活あるんでしょ?」


「え、ないけど」


「隼人君は?」


「ありません」


「じゃあ丁度良いわね」


何も丁度良くなんかない。


そもそも、隼人がどうしていつもうちでただ飯を食べているのかが問題だ。


「アンタさ、少しは迷惑かけてるなー、とか思わないの?」


そんな私の一言に、にやり、と隼人が笑う。


そして、私の方を向かず、母の方を向いた。


「おばさん、僕、迷惑でしたら、夕飯良いですから・・・」


すかさず母親の返事が来た。


「そんなことないわ。人が多い方が楽しいんだから。


・・・また彩子が隼人君をいじめてるの!?」


隼人がしたり顔をして、ご飯を食べ続けている。


「・・・っチ」


舌打ちをして、私もご飯を食べ始めた。