「ねぇ」
「何」
「アンタも、ああいう子が好きなの?」
「はぁ?何の話?」


隼人の足が止まる。


思わず私も足を止めた。


「今日、教室に来た子、凄い可愛かったし、アンタが鼻の下伸ばしてたから」
「伸ばしてねぇし」
「あの子、誰なの?」
「気になるの?」


アイツがにやり、と笑う。


無性に腹がたつが、ここで喚いても仕方ないし、


家も近いから、喧嘩すると色々言われちゃうかもしれない。


まぁ、もうとっくに言われているのだろうけど。


「別に。ただ、見たことのない子だと思って」
「だろうな。今年から入ったサッカー部のマネージャー。
試験終わり次第部活始めるから、ミーティングとか何とか、色々聞いてきた。それだけ」


何を話したかなんて聞いちゃいない。


ただ、ああいう女の子が好きなのか、知りたかっただけなのに。


でも、天邪鬼のコイツのことだ、


そういうストレートな聞き方じゃ、答えないかもしれない。


「男ってさ、ああいう女の子が好きなの?」
「は?・・・さぁ、そうなんじゃねえの?」
「『そうなんじゃねえの』って、アンタ、男でしょ」


再び、隼人が歩きだす。


私も同時に、隼人の数歩あとを歩きだした。