「・・・古田君」


「あ、はい」


麻子に話しかけられ、少し緊張した面持ちで、古田は答えた。


「彩子のこと、好きなの?」


「え、あ、いや、その・・・」


透き通るような白い肌を真っ赤にして、古田は俯く。


麻子は大きなため息を吐いて、彼に言った。


「彩子、なかなか手強いよ?」


「・・・う、そんなの・・・」


ストレートな言葉に、困惑した表情を古田は見せた。


「でも、古田君は優しくてカッコいいから」


麻子はそう言って、古田の前に回り込む。


「彩子に、古田君が『可愛い』って言ってたって、伝えておいてあげよっか」


その言葉に、古田は更に顔を赤くさせて、顔をぶんぶん横に振る。


「いや、だ、駄目です。


そ、そんなこと言っちゃったら、後々気まずいですよ」


「何を言ってるよ。それぐらい言わなきゃ、あの鈍感には伝わらないの」


腕を組んで、麻子は古田にどなりつけた。


それにしゅん、としょげてしまった彼に、麻子は再びため息をつく。


「・・・で、どこが好きなの?ちょっと言ってみて」


「えっと、元気で明るくて、何かベタベタしてないっていうか。


それに、スポーツもできるし、笑顔も可愛いし、しかも頭も良いし。


そういう子、なかなかいなくて、凄く良いっていうか・・・」


「・・・はいはい。ストップ」


照れ笑いをする古田を前にする麻子は、ちらり、と横目で見た。


そこには、不機嫌そうな顔をする一之瀬が、古田を睨むように見ていた。


(・・・こっちはこっちで、恋愛下手だし、


・・・どうして彩子は気がついてないんだろう)


麻子は3度目の盛大なため息を吐いて、購買部で残っていた菓子パンを購入し、


教室へと戻った。