午前中の授業が終わって、昼休みになった。


「あやこー!」


麻子が元気よく、私のところに駆け寄ってくる。


「早く行くよ!総菜パン、なくなっちゃう!」


私の手を強く引っ張ってくる麻子を、なんとかなだめようとするけど。


「急いで!じゃないと、私先に行くからね」


「わかった、わかった。教科書閉まってからね」


「そんなの後で良いから」


華奢の腕からは信じられないくらいの強さで、私は強引に購買部へと連行された。








「うわー」


夏休み明けの購買部は、ものすごい人の山が出来ていた。


「ほら、言ったのに」


隣に立つ麻子はふくれっ面をしえ、私を横目でじっと睨んでるつもりだろう。


だけど、それすらも可愛く見せるのが、麻子の魔性なところ。


麻子は、私の知る限りかなりモテる。


女の私から見ても、その可愛さは良く分かる。


目がいつもウルウルしていて、目はぱっちり、まつ毛も長くて、


唇はぼてっとしてて、色も白くて、サラサラの長い髪をなびかせている・・・。


うん、可愛いよね、どう見ても。


一方の私。


これといって、可愛い、というものでもない。


恐らく『普通』て言う奴だろう。


可もなく不可もなく。


他人の評価など知らないけど、多分そう。


とりとめもなく、そんなことを思っていると、誰かがうしろにやって来た。


「うわぁ、どんくせ」


「・・・どの口が言ってるのよ」


私を見下ろすようにしてうしろに立っているのは、私の最悪の幼馴染。


「3限の休みに買っておけば良いんだよ」


「休み時間ここまで抜け出していられるほど、アンタみたいに暇じゃない」


「良く言うよ。休み時間に友達の勉強の世話を見てる暇があるなら、


買いに来れば良いじゃん」


「はぁ?私はあんたと違って友達の面倒見が良いの。ったく、本当にムカつく」