桜下心中

 もう、帰って来ることもない。この家に。

 足を止め、見る粗末な仏壇。



「佐恵ちゃん」



 優しい声。

 聞こえなくなってからもう、どれくらい経つだろう?



 父と母の遺影に、ちょっと視線を送り、玄関へと向かった。


 そう、とっくにわたしひとりきり、だった。