びし、だん、と階段を上る足音。圭太だろうが、約束の時間より早い気がするけれど。

 上って来るのなど、圭太しか居ない。なぜなら1階の本屋、今日は「お休み」なのだ。


 ドアが開いた。

 佐恵は凍り付く。ドアを開けたのは圭太ではなく、以前喫茶店で会った糸田。

「お、あんただけ?」

 声が出ないほどビックリしていた。なんでここが?

「不用心だねぇ、鍵かけないで」

 そう言いながら糸田は、勝手に部屋にあがってくる。

「ちょっ……」

「まぁ、そうびくびくしなさんな」

 小さいテーブルを挟んで、わたしと、糸田。なんでここに来れたんだろう。何しに来たんだろう。