良い着物を着ているわけではなかったので、店内では少し恥ずかしかった。

 圭太は仕立ての良い洋服、わたしは祖母や母から譲られた着物。

 なんだか自分だけ浮いてるような錯覚。

 浮かれてどきどきと鳴るわたしの病んだ心臓は、それでも嫌などきどきではなく嬉しい気分も含んでいる。


 こういう所に自分を連れて入る、圭太の気持ちもくすぐったく感じた。午後のゆるく流れる時間が、店内を別世界にしているみたいで、そういうのも相まって。